2003/12/17


XI. 闇 (Darkness)


 彼が迎えに来たとき、ジニーはまだ目を覚ましていた。狭いベッドを取り囲むカーテンを見上げて、石の壁から沁み込んでくる冷気に、少しだけ身を震わせながら。彼は透明マントをまとっており、ひるがえすようにして肩から脱ぎ捨てると、それは空中で濡れた絹のようにかすかに光った。冷静な目がジニーの身体を見下ろし、やがて顔に向けられて止まった。整った弓形の眉を片方だけ上げている。それは、無言の問いかけだった。


 ジニーは微笑んで手を差し伸べ、彼がジニーを引き上げるのに任せた。狭いベッドの上から、彼の腕の中へと。浮かんでいた問いかけは消え去り、今や彼の両目は、確信に満ちて輝いている。そして彼はこうべを垂れて、ジニーと唇を触れ合わせた。ジニーは彼の首に両腕を巻きつけ、口づけに酔いしれ、引き締まった彼の身体が押し付けられてくる感触に、背中に回された大きな熱い手の感触に夢中になった。切実さはまだ存在した。どれだけ触れ合っても決して衰えることはないように思えた、互いに溶け合って一つになりたいという、狂おしい欲求。


 しかし今は時間がなかった。今この瞬間は。はるか下のほうから、悲鳴や叫び声がジニーの耳に届いていた。城の防御に亀裂を入れてゆく呪文。待ち受けていた学校の守り手たちと対峙した死喰い人たちが、必死に苦闘する気配。ドラコは、ジニーの耳もとにそっとささやきかけ、彼女が了解してうなずくのを確認してから身体を離した。そしてジニーに向かって自分のマントを投げかけ、ジニーがそれを肩からするりとまとって、虚空の中に姿を消失させるのを待った。あとはもう、ジニーが以前からベッドの下に用意してあった荷物をつかんで、彼のうしろに続くだけだ。ホグワーツから追い立てられていくほかの襲撃者たちの目を盗み、その横をすり抜けて。ヴォルデモートが最初にホグワーツを正面から急襲するという企てを明らかにしたときに、ドラコがジニーのために準備しておいた、安全な家へ。