2003/12/17


X. ロウソク (Candles)


 クリスマスの夜遅く、ロウソクの灯りは黄金の輝きを放ち、窓枠に切り取られた菱形の光となって塔のふもとの雪の上に映えていた。光は炎を思わせる少女の髪にも反射して、そのこうべを後光のように縁取っていた。まるで聖母だ――触れてはならない存在。純粋で清らかで暖かで。


 ドラコは自分の腕に刻み付けられた印の上を手でさすりながら、彼女の部屋の窓を、長い長いあいだ見つめ続けた。しかし彼女は決してこちらを見下ろしてくることはなかった。とうとう彼女は窓際を離れ、ロウソクの灯りは一つ一つ消されてゆき、城は暗闇に包まれた。夜の中に立ち尽くす彼の周囲で、くぐもったようにかすかなブーツの足音が、ざくざくと耳に響き始めていた。