2003/12/17


IX. 氷 (Ice)


 冷気と湿気と降雪に伴い、ホグワーツ城の狭間胸壁からは氷柱が垂れ下がるようになっていたが、それは実際に目にした者しか知るはずのないことだった。氷柱は切妻のところから下に向かって六フィート、七フィート、そして八フィートと伸びていった。落下したときに、もしそこに誰かがいればまず死んでしまうことだろう、氷の短剣。氷柱は月からの光を浴びて、群青色の光を空へと照らし返した。鏡のように、氷柱は反射していた――浮かび上がる暗い影たちを。隠された道から城を目指して近づいてくる、地吹雪の中をすり抜けて重々しい足取りで不吉な足跡を刻んでゆく、マントに覆われたいくつもの人影を。


 城はじっと静止したまま、待ち受けていた。黒い装束に身を包んだ人影がひそやかに森の中から現れ、この広大な建築物を取り囲もうと迫り来るのを、石壁そのものが感じ取ってでもいるかのように。すべてがしんとした静寂の中にあった。ただあの鋭く尖った氷の槍たちだけが、その光景を見ていた。