2003/12/17


VIII. ヒイラギ (Holly)


 大広間では、どの窓にもヒイラギのリースが吊り下げられていた。空気の中から邪悪な霊を追い払うために、緑色の尖った葉を突き出している。朝食をとりながら、ジニーは艶々とした葉を見つめて、こっそり微笑した。ヒイラギは魔術に対する防御の力を持つとされているけれど、ここにいる人たちは、誰も魔法を妨害されてはいないようだ。またしてもマグルの俗説の嘘が暴かれたということだ、と皮肉っぽく考える。そして、今年これらのヒイラギのリースは、いったいどのような悪の力を捕えるのだろうかと。ヒイラギの実には毒がある。ヤドリギの実と同じように。そしてその実は赤い――血のしずくのように。


 太古のむかし、聖なる王は木の葉と漿果で取り巻かれた錫杖をたずさえ、荊の輪を被せられたイエス・キリストのごとくそのこうべにヒイラギの冠を戴いていた。冬のさなかに自らの生命を捧げて、太陽の誕生を促すために。今度死ぬことになるのは誰なのだろうかと、ジニーは思いをめぐらせた。そしてその死は、世界に光を取り戻してくれるのだろうか、戦いを終わらせてくれるのだろうか、と。ジニーはハリーを想った。黒髪をした光の王者。そしてドラコを想った。敵対する側の輝ける天使。それから、目を閉じた。








訳注:現在のクリスマスの風習には、キリスト教以前のヨーロッパにおける「太陽の新生」を寿ぐ冬至の儀式の影響が色濃く残っていると言われている。