2003/12/17


VII. ツタ (Ivy)


 北の塔のてっぺんには、誰も来ない小さな部屋があった。窓はすっかりツタで覆われてしまっていたため、そこを通してわずかに入ってくる光は緑と黄金の色合いを帯びていた。部屋の中にはかすかに埃がただよい、隅には枯葉が積もっていた。静かでひんやりとした空間だった。渦巻くように壁を覆って、開き窓の上に垂れ下がっているツタが、室内に入ってくる物音や明かりを弱めていた。


 ジニーがここを見つけたのは、五年生の終わり頃のことだった。六年生になってからは、ここはジニーだけの自習室、そして隠れ場所となった。完全にひとりきりになれるところ。座るところに敷くための擦り切れた毛布と、書き机として使う折りたたみのテーブルを運び上げて、ジニーはここで宿題をした。あるいは、淡いエメラルド色の光を浴びながら横たわり、細かい埃が、かろうじて室内に届くわずかな日の光の中できらきらと輝くようすを、じっと見つめていることもあった。


 塔はドラコの普段の行動半径からはほど遠かったが、ジニーにこの小さな部屋を見せられたその瞬間から、彼はここを気に入った。塔の壁が形成する円の中央に立ち、目を閉じて古代の彫像のように頭をそびやかしたまま平穏と孤独に陶酔するドラコは、まるで自分だけのストーンヘンジにたたずむドルイド僧だった。ゆっくりと、やさしく、去年のクリスマスにふたりはこの部屋で初めて愛を交わした。ドラコが自宅から持ってきていた毛皮を部屋の中央に重ねた上で。そこはふたりだけの神聖なる空間に築かれた祭壇、その中枢部だった。


 あそこに行ってみようかと、ジニーは考えた。長い螺旋階段を上り詰め、愛によって聖別されたあの部屋へ。あの毛皮の上に寝転んで、淡い光の中をただよう埃をじっと見上げるために。しかし、ジニーはそうはしなかった。初めて互いを深く知ったあの場所でただひとり身を横たえることは、神聖さを汚す行為であるように思われた。