2003/12/17


V. 食物 (Food)


 驚くべきことに、城内にはまだクリスマスのご馳走を用意できるくらいに大勢の屋敷しもべ妖精が残っていた。時間になると、広間にはすぐに生徒たちが集まってきた。去年、あるいは戦いの始まった一昨年と比べると、生徒の数は減っている。マグル家庭の子供たちのほとんどは恐れのあまり学校を辞めてしまっていたし、魔法族の家庭の子供たちのほとんどは家族と共に過ごしているか、亡くなってしまっていた。ジニーは鵞鳥料理をつついてみてから首を反らして、天井に映り込んだ濃い灰色の雲を背景に眠りを誘うように漂っている、魔法の雪を眺めた。


 食後には、キャンディやタルトや糖蜜プディングまで供された。ダンブルドアは厳粛な表情で自分の杯の中を覗き込んだまま、スピーチはしなかった。ジニーにとっては、灰のように味気ない食事だった。かじかんだ指先で焼き菓子を一つ、粉々にしてしまってから、ジニーは早めにテーブルを離れ、今は自分しか使っていない寮の部屋に戻った。窓際でまるくなって、外の雪をじっと見つめていたかった。


 去年、彼はジニーのためにマンダリン・オレンジを持ってきた。皮を剥いて、小さな甘い房に分けたものを、一つずつジニーに食べさせた。楔のような形の房はジニーの歯の下ではじけて果汁をほとばしらせた。酸っぱい果汁をジニーは彼の指から、唇から舐めとって、彼の上下する胸の感触に酔いしれた。そしてオレンジの痕跡がすべて消え去ったずっと後になって、彼は途方にくれたような、悲痛に満ちたすすり泣きをもらした。