IV. ヤドリギ (Mistletoe)ジニーは大広間の正面入り口の上から垂れ下がる枝を見て、眉をひそめた。あそこからは出ないようにしようと心に留める。あの下で男子生徒と鉢合わせするのは嫌だったし、キスしたいと思うただ一人のひとは、ホグワーツからはるか離れたところにいた。少なくともそうであって欲しいと、ジニーは願っていた。もしも彼がここにいたらどんなことになるかは、考えたくもなかった。 戦いに明け暮れた長い一年だった。戦いと死に満ちた、もがき苦しみ続けた一年。不安にさいなまれながら、日付が変わるごとに、どんな報せがもたらされるかと待ちつづけた一年。どの人の顔からも、心にのしかかる負担が感じ取れた。マクゴナガルの髪に混じる雪のように白い筋や、空席のまま残されたスネイプの椅子からも。ハリーもハーマイオニーもロンも、もうここにはいない。前年度に卒業して、今では戦いの前線に出ているのだ。ジニーもこの学年が終わったら、彼らに続くだろう。授かることのできる教えを、すべて学び終えたら。今のホグワーツは学校というよりも、むしろ闇祓いを新しく育成するための訓練所のようだった。魔法省は、得られるかぎりの人材を必要としているのだ。 ドラコ・マルフォイは死喰い人の仲間になった。彼は生命を奪うことを楽しんでいるのだと、皆は言った。ヴォルデモートの緑色の頭蓋骨を空高く掲げるための言葉を叫ぶことに、このうえない喜びを感じているのだとも。マグルを拷問することに生きがいを見出し、不浄なる愉悦を覚えているのだとも。 この最後の主張は本当ではないとジニーは思っていた。誰にも分からないことだけれど。怒りを感じているときも、快楽を感じているときも、半開きになった彼の両目は同じようにしか見えなかった。それは、ジニーがこの目で見て知っていることだ。そして時には、怒りも快楽も、彼の中では一緒くたになっていた。ジニーは広間の扉の上に飾られた小さな白い木の実を見つめて、口づけに思いをめぐらせた。荒々しく激しいもの、深くやさしいもの。かすめるように、ごく軽く触れ合わされた唇。あるいは、ほかの誰にも見せたことのない場所に押し当てられた口唇の、焼けつくような熱。 ヤドリギには、炎の精が宿っている。アイネアスは冥界からの帰路を照らし出すために、これを用いた。 ペルセポネはかつて、ヤドリギの実を使ってハデスの門を開いた。 |