2003/12/17


III. 木々 (Trees)


 降雪と冷気をものともせず、ハグリッドは今年も大広間を飾る十二本のモミの木を見つけてきた。クリスマスの十二日間に合わせて、一日一本ずつ。ツリーは小さなライトやキャンドルで装飾され、各テーブルのために三本ずつ、それぞれの寮を表す色の布をかけられた。


 ある昼下がり、ジニーは敢えて城と森のあいだの雪掻きを決行し、禁じられた森のはずれまで、てくてくと歩いて行って境界すれすれの場所に立ち、森の奥深くを覗き込んだ。枝が外からの干渉を拒否するように重なり合って包み込んでいる、奇妙な静寂に耳を傾けながら。この場所では、雪はそれほど深くはなく、空気の中に、不思議と耳を澄ませたくなる何かがあった。ジニーは長いあいだそこに立って、森の奥を見つめ、何かを探していた――自分でも分からない、何か。森の周囲に沿ってあてどもなく歩いて行くとやがて、かつては誰かに踏み慣らされたことによってできた小道だったかもしれないものが見つかった。森の中心部に向かって続いている。辿ってみたかったが、ジニーの足跡を見咎めたハグリッドがやってきて、城に追い返されてしまった。








※クリスマスの十二日間
本来はキリスト生誕後 12 日目の1 月 6 日、"東方の三博士" がベツレヘムの星に導かれてキリストのもとを訪れたとされる "顕現日" までがクリスマス・シーズン。