2003/12/17


I. 雪 (Snow)


 今年は寒かった。あり得るべからざる寒さだ。そしてこの寒さは、湖から絶え間なく立ち上ってくる湿気と混ざり合って、局地的に小さな吹雪をもたらしていた。雪は渦巻きながら城に迫ってきて、何もかもをずぶ濡れの真っ白な外套のように覆い隠し、中庭では灰色のぬかるみとなって掻き回され、クィディッチ競技場では色彩を欠いた分厚い毛布のように、一面に降り積もっている。場所によっては腰まで埋まるほどの雪が、城の胸壁や城壁の刻み目を降り込めている光景には、どことなく現実でないような雰囲気があった。雪が窓々の枠の上に吹き寄せられ、ガラスを霜で曇らせていたため、内側からは、はっきりと外を見ることはできなかった。まるでホグワーツの外部には、まったく何も存在していないかのようだった。


 寒くてびしょびしょした不快な戸外に出て行く者がいなくて、雪はほとんど乱されることもなく、地面の上に降り積もったままの状態だった。一つには、あまりにも雪が深くなりすぎていて、そんな中を掻き分けていってもちっとも楽しくないから。そしてもう一つの理由は、今年のクリスマスをこの城で過ごす者が、かつてないほどに減ってしまっていたからだった。ハグリッドの小屋から城の礼拝堂までは、雪を掘って狭い通路が作られてあったし、ホグスミードへ続く道も通じさせてあったが、それ以外のところでは雪はあまりにも汚れのない純白を保っており、その上を歩くことは冒涜であるように思われた。


 ジニーは自分の部屋の窓際に座って、窓を見つめるのが好きだった。空想の中の真っ白なキャンバスに絵を描きながら。たいていの場合、絵の中にいるのは家族だった。ジニーが描く彼らはみんな揃ってつつがなく、隠れ穴に集まってクリスマスを祝っている。風に吹き飛ばされた木の葉のように国中に散らばっているのではなくて。友人たちを描いてみることもあった。授業中のひとこまを描き出すことも。そして時には、長身で色の白い、一人の男性を思い描くこともあった。白金の髪と氷のように冷たい灰色の目をして、その唇でジニーの名を呼んでいるひと。


 あまり頻繁にでは、なかったけれど。