2003/12/6

Their Room
(by aleximoon)

Translation by Nessa F.


第 7 章 無実の告白

(page 1/2)

 ハーマイオニーは壁にもたれかかって、深く息を吸った。
(いったいどうして、あんなこと言っちゃったんだろう?)
 自分に向かって、問いかける。


 マルフォイがああやって見つめてきたとき。感情の変化に伴って色合いが深まっていくように思えた、あの灰色の目に晒されたとき。ハーマイオニーは、嘘をつくことができなかった。誰にも言わずにいたことを、口に出していた。もう少しで、マルフォイを見殺しにするところだったということを。闇の魔法使いしかやらないような行動を取ってしまいそうになったということを。その事実を今、マルフォイに知られてしまったのだ。


 バッグを床に落として、その傍らに座り込んだ。膝を立てて額をくっつけると、濃い色の髪が顔に覆いかぶさってくる。あいつさえいなければ、何もかも完璧だったのに。今晩、図書館でやり遂げた作業はささやかなものではあったが、非常に興味深い内容だった。あの部屋にこもっていれば、あっという間に夢中になってしまうだろうことが、自分でも分かる。ハーマイオニーは数占いが大好きだった。高度な秩序と構造を備えた学問だ。でも、この状況では無理だ。マルフォイに睨みつけられながらでは、夢中になって没頭することなど不可能だ。マルフォイのことを考えると、本当に腹が立った。あの気取った目つき。陰険なニヤニヤ笑い。あいつがやることと言えば、トラブルを起こすことばかり。


「そのくせして、自分のこと美形だなんて自惚れて。たまに目がキラキラしているくらいのことで」
 ハーマイオニーはぶつぶつとつぶやいていたが、ハッと口をつぐんだ。
「何、考えてるのわたし。あいつの目がキラキラしているとしたら、それは何か邪悪なことを思いついたからってだけよ」


「ハーマイオニー、何してるんだい?」


 がばっと顔を上げると、ディーン・トーマスが見下ろしてきていた。


「あら、ディーン」
 ハーマイオニーは微笑みかけた。


「大丈夫かい、ハーマイオニー?」
 ディーンは独りっきりで暗い廊下に座り込んでいたハーマイオニーを見て、かなり心配そうだった。


「ええ、何でもないの。ただ、わたしがマルフォイをどれくらい憎んでいるかってことを考えてただけ」
 何を見るわけでもなく、ハーマイオニーは険しい視線で周囲を見回した。


「なーんだ、何か悩み事でもあるのかと思ったよ」
 ディーンは破願して気安い笑みを浮かべた。
「きみがマルフォイを憎まなくなったら、そのときこそは心配しちゃうだろうけどね」

 ハーマイオニーは、気分が和らぐのを感じながら、ディーンが差し出してくれた手を取った。ディーンは楽々とハーマイオニーを引き起こした。


 二人は連れ立ってグリフィンドールの談話室に戻った。のんびりと歩きながら、ハーマイオニーは図書館付属のあの小部屋でマルフォイと自分がどんな作業をしていたのかについて、絶え間なく喋り続けた。肖像画の穴を抜けたとたん、マルフォイの顔のイメージはハーマイオニーの念頭から完全に消え去った。いつ行っても、談話室は暖かく気持ちを落ち着かせてくれる場所だ。少なくとも、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズの製品テスト区域に入っていないときの談話室は。クィディッチの夜間練習がちょうど終わったところらしい。戸口のところにグリフィンドール・チームの全メンバーが立っているから。頭のてっぺんから足の爪先まで泥まみれのまま、皆で戦略談義をしている。ハーマイオニーはロンとハリーに向かって手を振り、あくびを噛み殺して女子寮に上がっていった。ラベンダーとパーバティが『恋愛手相術』という題名の占いの本を見ながら、楽しげにささやきあっていた。ハーマイオニーは肩をすくめて、自分の本をベッドの下に仕舞い込んだ。それからパジャマに着替えて、ホッとした気分でベッドにもぐり込む。眠りに落ちる寸前、最後に頭に浮かんだ言葉は「ドラコ・マルフォイなんか大嫌い」だった。