2003/10/11

Their Room
(by aleximoon)

Translation by Nessa F.

原文登録先:Fanfiction.net / ID : 386939
分類:PG-13



第 1 章 席替え

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「おはよう、皆さん。楽しい夏休みだったかしら」
 ベクトル先生は満面の笑みを浮かべて生徒たちを見た。
「見てお分かりのとおり、今年は去年までと比べると、少し人数が多くなっています。どういうわけだか、皆さんの学年ではそれほど数占いの受講希望者がいなかったの。さっぱり理由が分からないわ」
 そう言って苦笑する。
「でもとにかく人数が少なかったので、ダンブルドア校長はすべての寮の生徒たちをみんな同じクラスに入れて一緒に数占いの授業を受けてもらうことにお決めになりました」


 ハーマイオニーは最前列の机の前に座り、ベクトル先生に向かって微笑みかけた。隣には、ディーン・トーマスがいる。ディーンとハーマイオニーは、過去二年にわたってこの授業を一緒に受けてきた。実を言うと今初めて、ハーマイオニーはクラスの人数が前より増えていると気付いたのだった。とは言え、それほどたくさん増えているわけではない。グリフィンドールの五年生で数占いを取っているのはディーンとハーマイオニーだけだった。去年と一昨年の授業はレイブンクロー生と一緒で、別の曜日にハップルパフ生とスリザリン生の授業があった。しかし今、教室を見まわしてみると、驚いたことに二人のハップルパフ生、ハンナ・アボットとジャスティン・フィンチ=フレッチェリーが目に入った。それに視界の片隅には、スリザリン生のブレーズ・ザビニもいる。すべての寮の生徒を集めてもやっぱり少人数のクラスだということは、認めざるを得ない。まだ話し続けている先生のほうに、ハーマイオニーは意識を戻した。


「皆さんは、馴染んだいつもの習慣に捕らわれてしまっているようね。まるっきり同じクラスメートと一緒に勉強するつもりで、言われる前から教科書を出して。座っているところまで去年と同じじゃないの。あなたがたは、まだ若いんですよ! もっと人生を謳歌して新しいことに挑戦していくべきだわ。そう思って、今年は考えていることがあるの」
 びっくりしている生徒たちの顔を無視して、先生はふたたび微笑んだ。


 ハーマイオニーは眉を上げて、ディーンのほうに目配せした。なんだかベクトル先生は、いつもと違う。前年度までの物静かで恥ずかしがりやな先生ではなくなってしまっている。ハーマイオニーが知るはずもないことだったのだが、ベクトル先生は夏休み中に、泣き妖怪(バンシー)がらみで、ちょっとばかり嫌な経験をしていた。そのためホグワーツに戻ってきたときには、冒険心あふれる別人のような女性に生まれ変わっていたのだ。先生は、生徒たちが人生のありとあらゆる側面を満喫できるよう手伝ってあげようと心に決めていた。当の生徒たちの意向がどうであっても。


「そう言うわけで、今年の授業ではちょっとやり方を変えてみることにしました。まず、すべての課題は二人組になってやっていただきます。教科書も、今までほどには使いません。数占いは愉快で複雑な魔法学ですが、実用できなければ意味がありません。ですから今年は、実践中心でやっていきましょう。きっと楽しい授業になるわ」
 疑わしげな生徒たちに、ベクトル先生は得意げな笑顔を向けた。


「そうそう、もう一つ。ペアを組む相手も、今までとは変えましょうね」
 ハンナとジャスティンが、硬直した表情で教室内を見回した。ハップルパフ生は彼らだけだったし、それにこの二人は、カップルなのだ。ベクトル先生は二人の取り乱しぶりを見て、笑い声をあげた。


「まあまあ、ジャスティン、ハンナ。たった数時間を別々に過ごしたからって、何も悪いことにはならないわよ」
 しかし二人の顔を見ていたハーマイオニーには、それは大いに疑問だと彼らが思っていることが分かった。
「もう、組み合わせは決めてあるのよ。これならきっと、うまくやっていけるわ」
 そう言った先生は、本に挟んであったリストを引っ張り出し、新しいグループ分けを読み上げ始めた。


「ミス・アボットとミスター・ブート」
「ミスター・フィンチ=フレッチリーとミス・パークス」
「ミスター・トーマスとミス・ブロックルハースト」


 ディーンが立ち上がって持ち物をまとめ始めると、ハーマイオニーはため息をついた。ディーンはハーマイオニーに微笑みかけてから、レイブンクロー生のマンディ・ブロックルハーストが座っているところへ移動していった。ディーンと離れてしまったのは残念だ。彼は意外と数占いがよくできたし、勉強仲間としてはすごくうまくいっていたのに。突然、ハーマイオニーはほかの生徒たちがほぼみんな、ペアに振り分け済みであることに気付いた。自分の名前を聞き逃してしまったのだろうか?


「ああ、そうだった。ミス・グレンジャーは、ミスター・マルフォイとね」
 ベクトル先生はリストを折りたたんで、片付けるために背を向けた。








※先生が女の子を呼ぶときに付けている敬称は、原文では
「ミス (Miss)」ではなく「ミズ (Ms.)」なんですが、
どうも個人的にホグワーツは先生方が「ミズ」を使う
イメージじゃなくてどうしても違和感があるので、訳文では
「ミス・グレンジャー」等の表記でやらせてもらっています。
原作和訳版に準拠してますってことでよろしく。
あ、でももしかして、アメリカ版の原書では「ミズ」だったりするの?