2003/5/23

イメージチェンジ (The Makeover) by Davesmom

Translation by Nessa F.


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 友人たちが階下の談話室に行ってしまった後も長いあいだ、ジニーは鏡に見入っていた。みんな、生まれ変わったジニーに驚いていた。細く長く、まっすぐだったジニーの髪は、今は顔の輪郭に沿ってカットされていた。きちんと揃えたカットではなく、まっすぐなラインはどこにもなかった。美容魔女の手元を見ているときには、この人は何も考えていないのではないかと疑いたくなったほどだった。しかし出来上がった髪型は素晴らしかった。無造作に風になびくのに、それでも崩れたかんじにならないのだ。フォーマルな雰囲気にしたいときにはカールを加えてもいいし、シャワーの後そのまま頭をさっと振るだけで朝の支度を完了させることもできた。顔を縁取るように短くした髪のおかげで、かつてないような豊かな表情が出るようになった。新しい髪型はジニーの容貌に奇跡を起こしてはくれなかった。ジニーは今もこれからも、決して美人ではない。でも今、ジニーは魅力的に見えた。


 今や、男の子たちはジニーを意識し始めていた! これまで十回程度しか喋ったことのないような少年たちや、さらには知り合いでもなかったような少年たちから、何度も誉め言葉をかけられた。なんとハリーまで声をかけてくれた。眼鏡をしたままなのに! ジニーは眼鏡の件について自分の意志を通してよかったと思ったが、その一方で、もし眼鏡がなければどんなふうになるのだろうかとも考えた。ジニーは髪型を変えた結果に満足して、マルフォイに感謝さえしようとしたのだが、ジニーが美容院で支払いを済ませた直後に彼は姿を消してしまい、それからは一度も見かけていなかった。まあいいわ、とジニーは思った。月曜日になれば、温室で顔を合わせるだろう。そうしたらお礼を言おう。




 ダンスパーティはもう一週間後だった。ジニーがマルフォイの補習を始めてからほぼ二週間が経っており、スプラウト先生は彼の進歩に感心していた。もう合格できることは確実だったが、彼は自分の成功にすっかり気をよくして、単なる及第点ではなく、高得点をめざして頑張りたいと言い出していた。ジニーは彼の頼みを快く承諾した。それには、いくつかの理由があった。まず、ジニーは自分が人を教えるのが好きだということに気付いていた。自分が楽しいと思うことについて語るのはいい気持ちだった。そして、マルフォイは聞き上手だった。彼はジニーの容姿について意見を出して取引上での自分の義務を果たすとき以外は、めったに口を挟まなかった。またジニーは、マルフォイが自分をイメージチェンジさせたやり方が気に入っていた。髪型以外に劇的な変化はなかったが、小さな変化がすべて合わさって、大きな違いを生み出していた。そしてそのなかで、人工的なものは本当にわずかだった。ほんの少しお化粧をして、眉毛を数本抜いたくらいだ。ほとんどの変化は、立ち居ふるまいに関わるものだった。マルフォイは、強い印象を与えたい相手には彼の言うところの「先生声」を使うことを勧めた。彼によると、ものを教えるときのジニーの声は軽快に弾むようで、自信に満ちているらしいのだった。また彼は、ジニーには喋りながら身振り手振りを加える癖があるのに、それを抑制していると指摘した。彼はそれを抑えないほうがいいと言った。ジニーの手つきは優雅だから、と。そして何よりも、彼はジニーに「まっすぐに背筋を伸ばして」歩くことを教えてくれたのだ。


 しかし、なんだか奇妙な事態が発生していた。ジニーはついにハリーの気を引きはじめていたのに、それを喜んでいいのかどうか確信を持てなくなっていたのだ。彼はまだレイブンクローの女の子を誘っていなかった。なぜ知っているのかというと、ロンが昨晩、ハリーに尋ねたからだ。別の子を誘おうかと思っている、と言ったとき、ハリーの視線はジニーに向いていた。そしてジニーは、身体をこわばらせたのだった。一体、どうしてしまったのだろう? ジニーはかれこれ六年間も、ハリーに切ない思いを抱いていた。十歳のときから数えれば七年だ。なのに今になって、ハリーが好きではなくなったのだろうか?


 ジニーには、何が問題なのかわかっていた。この二週間で彼女はハリーへの片思いを卒業して、まぬけなことにドラコに片思いするようになっていたのだ。馬鹿、馬鹿、馬鹿……とジニーは心のなかで自分を罵倒した。ドラコが彼女に向ける注意は、完全に契約を果たすためのものに過ぎなかった。なんの意味もない。少しでもそれを疑うなら、彼の言葉を聞きさえすればいい。繰り返し、駄目押しされている。彼が意見を述べるときは、いつもこんなふうだ。「ぼくにはどうでもいいんだけどな、ウィーズリー……」とか、「まあぼくから見れば別にどっちでも大した違いはないんだが……」とか。が、実を言うと一度だけ、否定的な表現が頭に付かなかった提案があった。


 そのときドラコは、眼鏡の件を蒸し返していた。ジニーはコンタクトどころか、眼鏡を小さいものに変えることすら拒否していた。

「でもその眼鏡だと、顔の半分が隠れてしまうぞ。ポッティーに見てほしいんじゃなかったのか」


「眼鏡のまわりを見てもらうわ、マルフォイ」
 と、ジニーは宣言した。


 しかし突然、ドラコが素早い動きで眼鏡を奪い去った。ジニーはそれほど目が悪いわけではないが、対象に焦点を合わせるには、やはり眼鏡が必要だ。それでも、ドラコを睨むことは、眼鏡がなくても充分できた。


「返しなさいよ、マルフォイ。コンタクトも新しい眼鏡も嫌なの。この話はこれで終わりよ」
 ジニーが手を伸ばすと、驚いたことにドラコは素直に眼鏡を返してきた。ジニーが眼鏡をかけなおすと、不思議な表情をしたマルフォイが見えた。


「きみの言うとおりかもしれないな、ウィーズリー。あいつには眼鏡のまわりを見させよう。かけたままにしておけ」


 ジニーは、眼鏡なしの自分が眼鏡をかけた状態よりもさらにひどいとドラコが思ったための戦略的な判断なのだろうかと推測したが、どうでもよかった。それ以外のときには、ドラコの意見は非常に回りくどかった。だからどうだと言うのだろう? 彼は契約を果たしているに過ぎないのだ。彼の尽力は実を結ぶことになりそうだ。今日の夕方、ハリーは話があるので夕食後に談話室で会ってほしいと言ってきた。ジニーは了承したが、行きたくなかった。今では、ハリーの顔を見ても脳裏にはドラコしか浮かばなくなっていた。今でもドラコは時々第一級のろくでなしだったが、彼が笑いかけてくるとジニーは馬鹿みたいにぼうっとして微笑み返すしかなかった。自己嫌悪に溜め息をついて、ジニーは髪の毛をふんわりと手ぐしで整えてから談話室に向かった。きっと自分はパーティの夜に独りでいたくないというだけで、ハリーに申し込まれたら「はい」と答えてしまうのだろう。