2005/7/8
Chance Encounters (翻訳者あとがき)


 はい、おしまいです。ここまでお読みくださってありがとうございました。以下の文章は、最初 scrawls のページに書いてたんですが、ネタバレ炸裂なので、こっちに隔離。


 『イメージチェンジ』をすでにお読みの方は、「この作者さんって、ショートカットのジニーちゃん推奨?」とお思いになるのでは。うん、多分、そう。別の作品でも、Davesmom さん、髪の毛を短くするジニーさんを書いていらっしゃるんですよね。


 と、いうのはともかく。実は第 5 話(冬休み)の段階で、すでにドラコさんはジニーさんに落ちてました……というオチでした。改めて第 5 話を読み返しつつ、会話の裏に隠された“彼”の内心を想像するのもまた楽し。


 しかし私だったら、真相を知ったとき、ドラコのこと、ジニーみたいにその場で許せるか自信ないなあ。だって、これはかなり女の子側のプライド傷つくよ。軽い気持ちで準備したいたずらに、自分が絡め取られて身動きできなくなってしまったドラコにも、それなりに同情の余地はあるのですが。もともとは、精神的にそんなまっすぐな強い子じゃないからねえ。育ち方が歪んでるし。でもうやむやにするチャンスだってまだ残っていたのに、最後でちゃんと、正直になってごめんなさいが言えたので、きっとこれからは、よい男に育っていってくれるでしょう。というか、ジニーさんがビシバシと育て上げるのかも(笑)。


 ところで最初に「ボブ」さんが登場した第 5 話で、このエンディングを予想した人、どれくらいいます? 私はニブかったので、英文で読んだとき「え、こう来ますか?」と思いました。伏線ってあったかな? 強いて言えば、ボブさんが「ジニーの飲み物の好みを聞かれずとも知っていた」とか、「ジニーにオリジナルなニックネームを付けるのが好き」とか、「ジニーと会話がはずむタイプの人である」とか、「よく動く眉毛」とか……?


 それにしてもこのシリーズ、訳すこと自体とっても楽しかった。原文の軽妙な雰囲気を、どこまで出せたか心もとないのですが。あるエピソードでさりげなく出てきたセリフが、その後のエピソードで再び浮上、というのが何度もあるので、あっちに行ったりこっちに行ったりしながら言葉遣いを決めていました。第 1 話のあのセリフは、絶対に最終話でまた使うんだろーなー、くらいは原文連載中にも予想してたんですけど。


 あと、このシリーズでは、Davesmomさんは 「vignette」という形式に初挑戦しておられました。vignette って、英和辞典では「スケッチ風の小品」となっていますが、英英だと「a short description in a book or play showing the typical features of a person or situation(本や劇において、人物やシチュエーションの典型的な特徴をあらわす、短い記述)」なんて定義されています。寸劇を文章で書くようなかんじなのかなあ? 途中から定型化した冒頭引用句ともども、全話通して「様式美!」ってかんじで、そういうのも面白かったです。


 さて、いつも同じような締めくくりになってしまいますが、このお話を翻訳・公開する許可をくださった Davesmom さん、そしてお読みくださった皆さまに、改めて心よりの感謝を捧げます。本当に、いつもどうもありがとう!


2005. 7. 8, Nessa Fujii 拝