Their Room (aleximoon) |
登録先:Fanfiction.net (Link) 登録ジャンル:Romance/Angst カップリング:ドラコ×ハーマイオニー 分類:T (PG-13)/長編 (110,427 words) 【設定】主人公たちは 5 年生 【ストーリー】数占いで抜きん出た成績を誇るハーマイオニーとドラコは、ベクトル先生とダンブルドア校長のはからいで特別課題を与えられた。それは 500 年前の著名な魔法使いが遺した数占いに関する文献の調査。ふたりは史料の中に暗号で書かれた日誌を発見し、その解読を進めるうちに興味深い事実を知る。その一方で、ドラコはヴォルデモートに忠誠を誓えという父親からの再三にわたる要請を無視しつづけていた。 【あれこれ】 "We'll Always Have Paris"(以下 WAHP)の次にハマッたのがこれ。実は作品としてはこっちのほうが好きかも。文章力(と、校正に費やした神経の細やかさ)では、はっきり言って "WAHP" のほうが断然上だと思うのです。この "Their Room" は、日本人の私が読んでも「ザツい」と分かる文章や明らかなケアレスミスが散見される。しかし、とにかくストーリーに勢いと起伏があったし、ドラコとハーマイオニーの微妙な関係に説得力があって面白かった。それになにより、完結してるし!(これ重要。生まれて初めて熱中したファンフィク "WAHP" のネットに出ている分を全部読み終わって実はまだラストがないと知ったときのショックと言ったらもう!) "WAHP" がほとんどロマンス一辺倒で(それであれだけ読ませてしまう筆力はすごいが)ヴォルデモートの存在が彩りに過ぎなくなっていたのに対して、"Their Room" はもうちょい原作寄りのダークな世界。ヴォルとの直接遭遇はないものの(そっちはハリーたち原作主役陣に任せるとして)、これはヴォルデモート支持者であるルシウスと、その轍を踏みたくないドラコの父子対決の物語です。その戦いにハーマイオニーの存在、そして特別課題で研究していた史料が大きな意味を持ってくる。500 年前の暗号が解読されて知られざる歴史が明らかになってくる辺りは、けっこうわくわくしました。 ちなみに、ここで描かれてるハーマイオニーは、よい子で好きだなあ。なぜか海外ファンフィクでは、思春期以降のハーマイオニーが妙なかんじに色気づいじゃってるのが少なくないんですが(欧米には「お固い子」に共感できないファンが多いんだろうか?)、この作品の 16 歳ハー子はわりとまだ初々しく生真面目で初恋も経験していない。よい子だからドラコのことも、嫌なやつだと思いつつ傷ついたり危険に晒されてたりするのを見てしまうと放っておけないんだな。 で、対するドラコは、かなり性格悪く書かれてます。物語の開始時点で彼が闇の勢力を拒否しているのも正義感とかではなく、父親がヴォルデモートの言いなりになってる様子に幻滅し、「あんなのの子分になってもロクなことない」と損得を計算しているかんじ。最初から最後まで素直じゃないし、最低最悪な言動がたくさんあるし、自分の態度をはっきりさせないままハーマイオニーを振り回してるし、かなりの卑怯者。 でも、本当は彼自身が混乱してるんだよね。ハーマイオニーと課題でペアを組まされることになって以来、価値観を揺さぶられつづけて。その辺の心理描写が丁寧なので、なんだかその戸惑いぶりがかわいく思えてしまうのです。背伸びしているようでけっこう歳相応にガキだったり、冷めてるのかと思えばふいに情熱的だったり、ちょっと立ち直るなり、いけしゃあしゃあとよく言うよなあ、っていうようなひねくれたユーモアのセンスを発揮したりするのも憎めない。 この作品でのドラとハーの関係については、最終章の作者後書きにすごく納得したので、以下に抜粋(適当訳ですが)。
彼らが本当の意味で寄り添うことは決してないでしょう。いつでも甘くやさしいだけの関係なんて要らない。そんなのすごくつまらない。私はドラコとハーマイオニーを、非常にプライドが高く、異なった理想を持っているふたりの人間としてみています。彼らはこれからも衝突します。たびたび。 うん、たしかに、そういう話でした。 これのあと、ほかにもドラコ主役なファンフィクをたくさん読みましたが、実はこのドラコが(在学中の思春期真っ只中バージョンなら)今でも一番好きだ。キャラクターとストーリーとのかみ合い具合が絶妙というか。前書きによるとこの作者はもともと「ロンハー萌え」の人みたいなんですが、だからこそドラコ愛(笑)で盲目にならず、複雑なキャラを複雑なまま最後まで書きとおせたのかもしれない、なんて。なんかもう、こんなドラコが書けたら、ファンフィク作家冥利につきるよなあって個人的には思ってます。 (※ 作者さんの許可を得て全文を翻訳させていただきました。) |