ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜Dracordia (by LittleMaggie)Translation by Nessa F.
第 22 章 婚礼(page 2/3)
ゆっくりと静かに旋回しながら、ふたりは踊った。三曲目がフェードアウトして四曲目が始まったとき、ジニーが先に立って、バルコニーに出た。レストランの外の庭園では、すでに何組かのカップルが散策をしていた。ロマンティックな結婚式に触発された人々が、パーティの喧騒からこっそり逃れようと夜のとばりの下りた戸外に出て、口づけを交わしている。 外に出たジニーの赤い髪の上に、汚れのない雪が落ちかかっていた。ドラコは空を見上げた。どこまでも広がる黒い闇の奥から、無数の白い斑点がこちらに向かって降り注いでくる。自分の髪や睫毛にも、雪の粒がついているのが感じられた。 「何、考えてる?」 ドラコはハッとしてそちらを見た。 「聞かせて?」 「小さいときに初めて買ってもらった、そりのことを思い出していた。その日は、夜遅くまでそれで遊んだ。ちょうどこんなふうに、雪が降っていた。あの頃が、今まで生きてきたなかで一番幸せな時期だったかもしれない」 ジニーはうなずいた。 「きみといると、気分が浮上する」 ジニーの頬が、嬉しさに火照った。 「じゃあ、楽観主義者のことを好きでいる人間は?」 「いくらかはその楽観性の余韻を取り込むことになるんじゃないかしら」 「ごめん」 「何が?」 「ごめん 「どういうこと?」 「ジニー」 ジニーはドラコのコートの袖に顔を押し付けた。 ドラコは何も言わなかった。突然、弱気になっていた。 「わたしたち、これからも友達よ。約束して。一番の友達。ソウルメイトと言ってもいいくらいじゃない?」 「ソウルメイト」 「そんなことじゃなくて ドラコはようやくうなずいた。 「だから、約束して?」 ドラコは、素早く息を吐いた。それは、悲痛な涙がこぼれ出る直前のあの短い吐息に似ていた。しかしもちろん、今は涙を流しているような時間も心の余裕もない。その代わりに、彼はただ、身体の内側で痛みを味わった。 「どうして? どうしてそんなに、難しいの?」 ドラコはジニーの目を覗き込んだ。とても無防備で、率直な瞳。「友達でいましょう」と懇願している。そのとき、ロンの声が頭の中に響いた。ドラコを脅かす言葉、ドラコの力を内側から奪っていく言葉 即座に、ドラコは首を振ってジニーから身を遠ざけた。一瞬だけ、指先で自分の心臓の上をたどる。それから、髪に手を入れて梳いた。 「ええ」 「それをよりどころにして、約束する。ぼくたちがどんなに遠く離れても、それは存在するんだ。糸だよ。どうだ?」 「わかった」 「中に入ろう。寒くなってきたよ」 |