ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜
Dracordia (by LittleMaggie)
Translation by Nessa F.
第 21 章 覚悟
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ラベンダーは、自分の前に置かれたチリビーンズのボウルから目を上げてジニーを見た。
「で、結婚式がらみで何か新しいニュースは?」
真っ赤な唇を恐る恐るすぼめて、細く立ち上る湯気に息を吹きかけながら、尋ねる。
「ハーマイオニーのドレスが決まったわ」
ジニーは誇らしげに言った。
「花嫁姿、素晴らしいわよ。素敵なノースリーブのガウン。肩まわりはレースを巻きつけてあって、うしろは裾を長く引くの。ほんとにきれい」
「ハリーはどうしてる?」
「そわそわしてる。でも、やっぱり準備は万端よ。彼の黒いスーツも素敵。洒落たかんじの白いスカーフと白い手袋を合わせて。コンサート・ピアニストみたい」
ジニーは感傷的な小声で答えた。
「わあ」
ラベンダーはため息をついた。
「あなたのお兄さんが買ったスーツもいいわよ。あれを着るとなかなかセクシーだわ」
そう言ってクスクスと笑う。
「ぱっと目を引く背中のあいた妖艶な黒いドレスを着てるのがわたしだからね……万が一、見てもわからないといけないから、言っておくけど」
ラベンダーが視線を上に向けると、人工的にカールさせた濃い睫毛の下で、目がきらきらと輝いた。
「華麗に装うつもりよ」
「そう」
ジニーはセーターのボタンをいじくりまわした。
「あなた、ドレス買った?」
ラベンダーが尋ねた。
「いいえ」
「ちょっと本気? ねえ、今の時期じゃもう遅いのよ!」
ラベンダーはため息をついた。
「新年やクリスマスを控えてるんだもの。いいやつはみんな売れちゃってるわ」
「卒業式で着ていたあれにするかも」
「嘘だと言って!」
ラベンダーはぎこちなく笑った。
「もうみんな、あなたがあれを着てるところを見てしまってるのよ。それに、おそろしく流行遅れじゃない。ピーチ色のモスリン? おねがい、自分を辱めるようなことはやめなさい。いい子だから」
「リフォームできるわ」
惨めな気持ちで、ジニーは提案した。
「魔法の杖を使ってブルーか何かに変えてもいいし」
「女の子たちはみんな、黒いドレスよ。浮いちゃうわ」
ラベンダーは、脅すようにジニーの目を見つめながら、ささやいた。
「絶対、一緒にショッピングにいかなくちゃ。パートナーだって決まってないんじゃないの?」
ジニーは、自分の顔が赤らんでいくのを感じた。
「パートナーはいるわ」
ラベンダーの決め付けるような視線が嫌で、ジニーは嘘をついた。
「まさかドラコじゃないでしょうね?」
ラベンダーは批判的なようすで、舌打ちをした。
「だったらどうなの?」
ジニーは言い返した。
「別にいけないことはないと思うわ」
「そりゃあ、あなたはそう思うでしょうとも。でも、傍目から見たらどうかってことがわからない? ハリーとハーマイオニーの気持ちを考えてみなさいよ。人生最高の日になるはずが、一晩中あの皮肉っぽい顔を見なくちゃいけなくて台無しになっちゃったら、どんなに不愉快か」
「最近のハリーは、ほんとにドラコの力になってくれようとしてるのよ。わたし、彼に相談して、それで……」
「ハリーみたいな心やさしい人が、あなたの言うことを無下に拒否できると思う?」
ラベンダーは尋ねた。突如として、いつもの軽薄さや、男の子のことばかり考えてはしゃいでいるような側面がすっかりなくなって、ラベンダーは真剣そのものになっていた。
ジニーは眉をひそめて顔を曇らせた。自分とドラコのことを、誰も彼もが非常にゆゆしい事態として捉えるようになってきているのが、ジニーには気に食わなかった。ドラコ本人でさえ、そうなのだ。
「ハリーが、わたしの機嫌を取りたくて嘘をつくとは思えない」
「どうかしらね、ジニー。わたしには、あなたが自分の足には大きすぎる靴を履こうとしているだけのように見える」
そのときロンが部屋に入ってきたのに気付いて、ラベンダーはすぐに席を立って走り寄った。網タイツが美しい脚を目立たせている。
「ロニー坊や!」
「やあ、ラベンダー」
ロンはラベンダーに軽くキスをしてから、ジニーのほうを向いた。
「ぼくたちはデートに行く。そろそろドラコが戻ってくる頃だから、チリビーンズの残りを温めてやれよ」
「ええ」
ジニーは返事をしつつ、ぼんやりと微笑んだ。ふたりっきりの家の中で、家族に怒鳴られることなくドラコと話し合いをすることを考えながら。少しばかり説得をしなければならないことがある。
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