ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜Dracordia (by LittleMaggie)Translation by Nessa F.
第 17 章 最初の衝突(page 2/2)
モリー・ウィーズリーは食卓についた皆のために、ミートローフを気前よく切り分けて、最初にナルシッサの分、次にドラコの分、それから夫と自分自身、ロンにも一切れ、そして最後にジニーという順で配った。全員が沈黙していた。時計がそっと時を刻む音でさえも、脅威的なほどに大きく感じられる。この音には、アーサー・ウィーズリーの額に浮き出た血管が脈打つようすや、ナルシッサの指がトントンとテーブルを叩く規則正しい音に通ずるものがあった。 引越しのあと、ジニーは家族を脇へ呼んで事情を説明したのだった。善良な両親であるウィーズリー夫妻は、ふたりとも表立ってジニーを叱りつけようとはしなかったが、心の内ではカンカンに怒っており、このようなめぐり合わせに耐えなければならないほど自分たちは何か悪いことをしただろうかと考えていた。モリーは曖昧な笑顔で、アーサーに話しかけた。 アーサーは魔法省を定年退職して、フレッドとジョージのいたずら専門店を非常勤で手伝っていた。彼は微笑んで、肩をすくめた。 モリーはホッとしたように笑い声をあげ、ロンもそれに倣った。ジニーも微笑を浮かべた。マルフォイ家のふたりは、石のように黙りこくったままだった。ドラコはようやく身動きして、自分の前に置かれたミートローフを切りはじめた。今のところ、ウィーズリー家とマルフォイ家のあいだには、食べ物が手渡されたときの儀礼的な感謝の言葉以外には、まったくなんの交流もなかった。 「あなたもいたずら専門店に行ってみない? ミスター・マルフォイ」 ドラコはジニーのほうを見て笑みを浮かべたが、そこで自分の母親の渋い顔を目にして、慌てて陰鬱な声で返答した。 ロンが苛立たしげに咳払いをした。 「な……なんとかなると思うわ」 「ふうむ。味付けに塩と胡椒しか使っていないミートローフなんて、初めてよ」 モリーの顔が赤くなった。 「謝る必要はないぞ、モリー」 しばらくは苦々しい沈黙がつづいた。ドラコが立ち上がって、咳払いをした。 「どういたしまして」 ドラコは、少々たじろいだようだった。背後にある台所の流し台をちらりと見てから、自分の皿に目を落とし、こんなことはいつもやっているというふりをしようとしている。ジニーはドラコの居心地悪そうなようすを見てとって、とっさに立ち上がり、自分の皿と一緒にドラコの皿を手に取った。 まだ半分残っているミートローフをドラコの皿で隠しながら、ジニーは流し台のところに行って、二枚の皿を水につけた。ドラコは退室して、自分にあてがわれた部屋に入っていった。 つづいてナルシッサも立ち上がった。 「おやすみなさい」 「ナルシッサはいつもあんなかんじだけど、ドラコはそんなにひどくないのよ。今はちょっと、気おくれしてるんだと思うわ」 「気おくれ?」 「ドラコに声をかけてあげて。少しだけでいいから」 「よくそんなこと言えるな? 在学中、あいつがどれほどの糞ったれ野郎かということを、ぼくは家への手紙にだっていつも書いてただろう」 「ロン!」 「実際、おまえがどうしてあいつらを家につれて帰ってきたのかってこと自体、ぼくにはわからないね。破産しようがどうしようが、関係ないじゃないか。そろそろ人生の厳しさってやつを経験してもいい頃だ」 「もうやめなさい、ロン」 アーサー・ウィーズリーはしかし、黙ったままだった。内心ではロンに同意していたのだ。ただ首を振り、ジニーに向かって言った。 「アパートが見つかるまでよ。そうね、一ヶ月くらい?」 モリーは不安げに自分の皿に目を落とし、咳払いをした。 ジニーは首を振った。 「ここに馴染んできたら、わかるもんか。今までは惨めすぎただけで、ここで暮らしはじめたら一気に元通りさ」 ジニーは唇を噛んだ。 「なんだよ? 本気で、ドラコをハリーに変身させられるとでも思っていたか?」 「今すぐお黙りなさい! 子供みたいに言い争いをして!」 「誰が住むアパートなのかは大っぴらにしないでほしいの!」 「そうだろうとも。アパートに引っ越すなんぞ、とんでもなく恥ずかしいことだものな」 「一ヶ月が終わるまでハリーのところに泊まりに行っちゃ駄目かな?」 「いけません、ロン。今ここで、取り決めをしておきましょう。みんなが自分のとるべき行動を忘れないように」 アーサー、ジニー、ロンはテーブルの上に身を乗り出して、モリーの言葉を待った。 「とにかく 「お母さん!」 「ジニー、あなたはルシウスの世話でずっと二階にいることになるわね。約束してちょうだい、ドラコが何か妙なそぶりを見せたら即刻、母さんに言うこと」 ジニーは首を振ったが、結局は同意せざるを得なかった。 「第二に……」 「ナルシッサのことはどうする?」 「もしまた眠ったまま歩き回るようなら……本人にはっきり言ってやるしかないわ。何も見ずに、いつまでもよろよろとうろつきまわるのを許せるほど広い家じゃありませんもの。それから、最後になったけれど 「わたしは仕事で……」 「彼らに住むところや食べるものを与えるのは、おまえの仕事じゃないだろ。そもそも、もう賃金だってもらってないんじゃないのか?」 ジニーは気まずい思いで肯定した。 「いや、待てよ。ドラコは、別のやり方でおまえに支払いをしているのかもしれないよな?」 「ロン!」 「でもほら、顔が真っ赤じゃないか」 「それはだって……だって、兄さんが意地悪だからよ!」 「さあ、もうそこまでにしなさい! ロン、二度とそういう話を持ち出すんじゃない。自分でも信じちゃいないくせに。ジニーがそんなことで、自分の家族に嫌な思いをさせたりするはずがない」 「じゃあお願いしますね、お父さん」 ロンは呆れ顔になった。 「あら、でもやってることは子供みたいよ。さあ、行きなさい」 |