ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜Dracordia (by LittleMaggie)Translation by Nessa F.
第 6 章 修復のとき(page 4/4)
ジニーは立ち上がって、手紙を届けるために階上に赴いた。ドラコの部屋のドアはぴったりと閉じられており、ジニーはためらった末にノックをした。応答がなかったので、ゆっくりとドアを開いて中を覗いてみる。 ドラコの私室を見るのは、これが初めてだった。ジニーがここに来て以来、この部屋のドアは常に固く閉ざされていたからだ。壁は一面灰色とわびしいかんじの白で、ヴィクトリア調の悪趣味なレース模様の壁紙に覆われていた。部屋の隅にある銀色の台がついた背の高いランプには、オフホワイトのシェードがかかっていた。また四柱式ベッドがあり、その柱の木材は白樺の樹皮の色だ。寝具は意表をついていた――深みのある紫色のシーツに、分厚い白色の上掛けが重なっている。枕は白地にみぞれが降ったような灰色の縦縞が入ったものだった。 ドラコはぴんと背筋を伸ばして窓際の机に向かい、作業に没頭していた。熱心に書き物をしているようだったが、ジニーはとりあえず思い切って近付きながら、声をかけて自分の存在を知らしめた。 ドラコは苛立たしげに顔を上げた。 ジニーはドラコの前に封筒を置いた。 「ああ、クラッブとゴイルからだ」 ジニーは赤くなった。 「じゃあ、用事をやろう」 ジニーはドラコの後につづいて、廊下を進んだ。巨大なガーゴイル像の置かれた中央通路を途中まで横切ったところで、ドラコは足を止め、北の棟のほうに曲がった。 見ていると、ドラコは北の棟に向かって歩いていった。廊下の端にドアがあった。少し開いている。ドラコはそのドアを引いて開けた。ふたたび扉が閉ざされるまでのあいだに、本がいっぱいつまった本棚が並んでいる室内がちらりと見えた。 ドラコは数分間、その部屋の中で過ごしていたが、やがて一冊の本を手に持って出てきた。 「いいえ」 「誰かが中に入ったんだ」 「わたしじゃないって、言ってるじゃないの!」 「母はあそこには足を踏み入れない。そもそも北の棟を封鎖したのは母だ」 ジニーは不安げに身を震わせた。 「天井の修繕がしたかったんだろ?」 「ああ」 ドラコは本を手渡してジニーの肩をポンと叩いた。それから引っ込めた手を、ジニーが見ていないときに、ズボンにこすりつけてぬぐった。そのあいだにジニーは本を開いて、適切な呪文を見つけ出していた。 「そうだ」 しかしジニーはくじけることを自分に許さなかった。一瞬後には、もう呪文を唱え始めていた。ドラコの助けなんか要らない。ナルシッサの助けだって。そして彼らのうちどちらのせいでだって、絶対に落ち込んだりなんかしてやるものか。 |