2003/6/20

ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜

Dracordia (by LittleMaggie)

Translation by Nessa F.


第 6 章 修復のとき

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 それから何時間も経ったその夜の八時近くに、ジニーはひとり台所で座って、ラベンダー・ブラウンから届いたばかりの手紙を読んでいた。ラベンダーとはホグワーツ在学中、高学年になってから親友同士となっていた。不思議な友情ではあったが、ふたりを結びつける共通点はひとつ存在した。ペットを失ったこと。ラベンダーが飼っていたウサギのビンキーはキツネに殺され、ジニーも小さい頃にウサギの死を経験していた。それで話をするようになって、ふたりは互いがとても違っていると同時に、妙に似た部分を持っていることに気付いたのだった。


 手紙は個性的で、質問だらけだった。



ジニーへ


 こんにちは、ラベンダーです。フクロウを見たらわかったわよね。うちの子、すごくかわいいでしょ? トレローニーっていう名前にしようと思ったの。今でも、一番クールな先生だったと思うわ。結局、フクロウの名前はトレリー (Trelly) になったけど。どうしてかっていうと、ペット用のネームタグを彫ってくれるお店で、一行に六文字までしか入らないって言われたから。あはは!


 こっちは全然、変わり映えのしない毎日です。というわけで、さっさとあなたの話に行きましょう。ドラコと一緒に暮らしてるって聞いたわ! 大変じゃない! ねえ、ドラコって、何か嫌な癖があったりしないの? 鼻をほじるとか。だって、在学中あんなに他人の弱点をほじくり出してばかりいたんだもの、きっと自分にも何か許しがたい短所があるんじゃないかしら。自分の劣等感を否定したくて、他人をいじめてただけなのよ。そういうことを、トレローニー先生が言ってました。自衛メカニズムの一種なんですって。


 この便箋の香り、どう? 新しい香水を買ったのよ。パーバティはひどい匂いだって言うんだけど、わたしはいいと思うの。



 ジニーは便箋をちょっと嗅いでみて、たじろいだ。強烈な桃の香りに混じって、新しいインクの香りらしきものが鼻を刺した。ラベンダーは六年生の頃から香りつきインクを愛用していて、それは卒業までずっとスネイプのからかいの種になっていた。卒業式のときスネイプは参列者一同の面前で、ダンブルドアがラベンダーの卒業証書も香りつきインクで書いてやればよかったのにとのたまったのだ。



 とにかく、マルフォイってどんなかんじ? 家族そろってヘンなの? あの一家は最近どこかおかしいってみんな言ってます。ヴォルデモート支持者のなかでも一番高い地位にいたわけだし。ホグワーツでの仕事は好きよ。トレローニー先生の弟子になったの! 今まではアシスタント扱いだったのに! 信じられる? もうわたし張り切ってるんだから!


 シェーマスは彼氏としては本当にいいひとだけど、時たまうんざり。靴下をどこにでも脱ぎっぱなしにする癖があって、本当にイライラします。ドラコもそうじゃないの? 当たった? きっとものすごく臭くて毒々しい靴下で、ちっちゃなアヒルがプリントされてるのね。想像しただけで大笑いよ!



 ジニーは目を白黒させて、さらに一ページにわたって書き綴られた、あるパーティに関する分析を読んだ。ラベンダーはそれに出席して、ほかの招待客がお茶の葉で運勢を占う手伝いをしたらしかった。一番最後に、ラベンダーは装飾的な渦巻きのついた非の打ちどころのない手書きの飾り文字で署名をしていた。ジニーは封筒に手紙を押し込み、フクロウのトレリーを撫でた。
「返事は明日書くことにするけど、いいかしら?」
 フクロウに向かってささやく。
「だからもうおうちにお帰り」


 トレリーはホウと一声鳴いて窓から飛び立っていった。ジニーは椅子にもたれかかって、背もたれの横板が揺らいできしむのに耳を傾けた。台所の窓はすべて開けてあった。夕食を作っていてひどく焦げつかせてしまったからだ。一生懸命やったつもりだったのだが。しかし肉料理は無事だったし、実際のところ、こんがりと香ばしくていつもより美味しいくらいだった。ナルシッサにはそれでも叱責されてしまったけれど。


 ほどなくして、さっきとは別のフクロウが舞い降りてきた。今度のは非常に丸々としており、目に困惑したような表情を浮かべていた。フクロウはテーブルの上に着地し、まじまじとジニーを見つめてから、くちばしを開いて石炭の染みがついた手紙を卓上に落とした。封筒を表に返して宛名を確認すると――"ドラコ・マルフォイ"。