ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜Dracordia (by LittleMaggie)Translation by Nessa F.
第 6 章 修復のとき(page 2/4)
ナルシッサは、苛々しながらジニーが昼食を準備し終わるのを待っていた。菓子パンと熱いお茶が中心の、ささやかかつ簡単な食事だ。朝からの雨は一向に止む気配がなく、今では屋根を叩きつけるような激しい雨音が耳のなかで鳴り響いていた。ジニーは、自分の部屋の天井が雨漏りすることに気付いて、ゴミ入れとして使っていたピンク色の藤細工の籠(中にビニール袋を敷いてある)を雨水のたれる場所に置いてあったが、対策としてはきわめて不充分だった。みながテーブルに着き終わるまでしばらく待ってから、ジニーは要望を切り出した。 「まったく不必要なこと」 ドラコはずっと、考え込みながら自分のお茶をかき混ぜつづけていた。魔法省はその日、本館の改築のため休業していた。その休日を、彼は何度も台所に忍び入ってはアルコール類を摂取して過ごしていたが、強いものは飲んでいないのだろう。見たところ憂鬱そうではあっても酔っ払っているようではないから。とは言え、相手がドラコの場合、酔っ払うということの定義がふつうとはまるで違う。単に、いっそう深い憂鬱のどん底に落ち込むだけなのだ。 沈黙は、外からの雷の音によって破られた。それに後押しされたように、ドラコは口を開いた。 ジニーも思い切って言い足した。 「屋根の修繕は、ルシウスの役目なのよ――役目だったの」 ジニーは黙ったまま、上下に首を振って賛同の意を表明した。手を伸ばして、自分用の菓子パンをもうひとつ取り、お茶にひたす。 それを聞くなり、ドラコが警戒するようすを見せた。さっきから数分にわたってテーブルの上を秘密の暗号のようにトントンと叩いていた指がぴたっと止まった。 「どんなお話かしら?」 「主に、二階の窓のことです。ほんとに脈絡もなく、気がつくと勝手に開いてるんです。原因はさっぱりわかりません。深刻なことじゃないといいんですけど。たわいのない、おまじないとか」 「馬鹿なこと言わないで」 ジニーは下唇をかんだ。 一方ジニーは、ドラコが怪しいのではないかと考え始めていた。彼はノイローゼ気味だし、もしかしたら気が狂ってさえいるのかもしれない。夜中に起き上がって錯乱状態で窓を開けまくっていることだってあり得るのではないだろうか。今のマルフォイ家では、どんなことだって考えられる。 |