2003/6/18

ドラコーディア 〜ドラゴンの心〜

Dracordia (by LittleMaggie)

Translation by Nessa F.


第 5 章 罪悪感

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 自宅に戻ったハリーはクローゼットにコートをつるしてから、ハーマイオニーにフクロウ便を送って夕食に誘った。フクロウは一時間後に返事を携えて戻ってきた。すぐにこっちにやってくるということだった。ハリーは着替えて、買い置きの食材でふたり分の夕食の準備にとりかかった。テーブルの中央に二本のロウソクを灯し、シャンパン・グラスを二つ並べる。今日は、ふたりが正式に、周囲にわかる形で付き合うようになってから、ちょうど三周年だった。忘れていないことを知ってハーマイオニーが驚いてくれるといいな、とハリーは思った。実は、卓上カレンダーにもしるしをつけて、ずいぶんと前から指折り数えてこの日を待っていたのだ。


 いつものように、ちょっとばかりまとまりのない髪型のまま、ハリーは焼きたてのステーキ、しゃっきりと美味しそうなサラダ、そして熱々のベイクド・ポテトを皿に盛り、席に着いた。ドアにノックの音が聞こえるまでには、そうかからなかった。
「ハリー! 来たわよ」
 ハーマイオニーの元気な声が聞こえた。


 ハリーははじかれたように立ち上がってドアを開いた。ハーマイオニーが "姿あらわし" によってやってきたのだった。すばらしくきれいだった。夏のあいだに短くした濃い色の髪が頬にかかり、襟首のところでまとまっている。
「おめかししてるのね」
 そう言ってからかったハーマイオニー自身も、しなやかな黒いイブニング・ガウンをまとっていた。


 ハリーはハーマイオニーの唇に軽くキスをして抱き寄せ、家に招き入れた。ハーマイオニーの目をふさいで後ろ向きにさせ、ロウソクとディナーを用意した部屋に誘導する。目を覆っていた手を離してテーブルを見せると、ハーマイオニーは息を呑んだ。
「まあ、覚えてたの!」


「忘れてたら明日あたり、バラバラ死体にされてるんじゃないの……」
 ハリーは笑い声をあげて、さらに相手を抱き寄せた。
「三周年のお祝いだよ、ハーマイオニー」


「うーん」
 ハーマイオニーはこの上なく嬉しそうな表情になって、目を閉じた。
「去年とは全然違うわね。去年は素敵なレストランにつれて行ってもらって、すごく大っぴらに楽しんだけど、あの嫌なタブロイド紙の記者たちは時々、あなたのいるところならどこにでもついてくるから……」


 ふたりは席について、食べはじめた。


「あら、このステーキどうしたの?」
 ハーマイオニーは、ステーキをじっと見ながら小声で言った。ほとんど端に脂肪のついていない、非常に美味しそうな一切れだった。
「いいお肉ね」


「ほら、ウィーズリー家の双子のいたずら専門店のすぐ近所に新しくできた食料品店だよ。そんなに高くないんだ」
 ふたりはテーブルを挟んで少しのあいだ見つめ合った。ハーマイオニーは赤くなった。


 うつむいて落ち気味のVネックの襟元を引き上げ、位置を少し調整しようとする。
「このドレス、馬鹿みたいじゃない?」
 そう言って、ハーマイオニーは笑った。
「せめてあなたも正装してるといいなって思ってたの。よかった。でなきゃ、本当に馬鹿だわ!」


「すごく素敵だよ」
 ハリーは笑いかけた。


 小粋な襟ぐりの深いドレスで、黒いキラキラしたものが散りばめられた、ストラップの細いオープントウの靴とおそろいになっている。また、ハーマイオニーの両耳には、黒っぽい宝石がついていた。少し前に母親から誕生日のプレゼントとして贈られたもので、最近のハーマイオニーはこのお気に入りの黒いイヤリングを、着けていないときはないくらいだった。


 食事が終わりに近付いた頃、ハリーは唐突に口を開いた。
「実は、きみに相談したいことがあったんだ。すごく悩んでるんだけど……」